農業を通じて里山を守りたい
今回は、枚方の穂谷地区でイタリアントマトやベビーリーフ、ホウレンソウなど旬の露地野菜を作っているひらかた独歩ふぁーむ(どっぽふぁーむ)代表の大島哲平さんに、これまでの経歴や、作っている野菜、穂谷の魅力をお聞きしました!
脱サラして、知識ゼロの状態から農業を始めた大島さん。「いつの間にかここで農業をしてたんです」と穏やかに、そして時に熱量を込めて、お話しをしてくださいました。
もより市枚方市駅、樟葉駅、フレスト香里園、和幸カントリー倶楽部(土日)など
公式サイト:https://www.doppo-farm.com/
Instagram :@hirakata.doppo.farm
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お問い合わせは、公式サイト内 お問い合わせフォームから
地元ファンも多いひらかた独歩ふぁーむのお野菜、一体どんな人が育てているのでしょうか?
ゼロからスタートした農業
- 農業を始めたきっかけ、海外での経験
大島さんが「食べ物に関する職業に就きたい」と大学卒業後に就職したのは、給食の食材調達をするお仕事でした。食に関する職業には従事していたものの、デスクワークが中心の毎日でどこか満たされない気持ちがあったそうです。
学生時代から環境への関心が高く、環境に配慮した有機農業というものを知りました。そこから「いつか農業をやってみたいな」という意識はずっとあったと思います。
デスクワークが中心の日々を送っている中で、もっと本質的に食べ物に近づいていきたい。そんな気持ちが農業を始めようと思ったきっかけでした。
まだ農業を始める当てもなかった大島さんですが「よし農業をするぞ!」という気持ちで前職を退職したそうです。大島さんのご実家が農家ということもなかったので、脱サラしてゼロから農業を学び始めることになりました。
- 知らない土地で暮らしながら学ぶ
農業といってもどんな方法で、何を育てるのか、そして何のためにやるのか。そういったことを学ぶために農業系のセミナーに参加する勉強の日々がスタートしました。とあるセミナーで、大島さんはオーストラリアの農業事情について興味を持ったそうです。
オーストラリアという国は、土地の広さの割に人口が少なく、農業従事者の不足が問題でした。そこでワーキングホリデービザ制度を利用している海外の人材を季節労働者として雇っていたんですね。
日本とは全く異なる農業を経験することで、私にとっても将来的にその経験や海外で培った視点が役に立つのではと思いました。
就農してからだと、長期間海外で農業を学ぶことが難しくなるので、退職後の時間があるタイミングでオーストラリアへ行くことを決めました。
2007年から2009年までの2年間、大島さんはオーストラリアの農場で季節労働者として働きました。現地で車を買って、宿舎と農家を行き来する生活を送ったそうです。関わった農作物はバナナやカボチャ、マンゴーなど多岐にわたります。
オーストラリアは広いので、各地域の農場に行くだけでガソリンがすぐ無くなるんです。そのガソリン代を稼ぐためにまた次の農場へ行く。そんな毎日でした。
語学や文化の違いを飛び越えて、農業だけでない貴重な経験ができたと思っています。オーストラリアでの2年間は楽しかったです!
帰国後は、日本の有機農業の実際を知るべく兵庫県の有機農家、橋本慎司さんの下で住み込みで研修をしました。自分のイメージする有機農業を体現している師匠的な存在のもとでそのまま就農をしようと思っていたのですが…
このままこの場所で就農してしまっては、その人の第二号になってしまうだけで”つまらないな”と思いました。
どうせなら生まれ育った枚方で、自分にしかできない農業に挑戦したいと思い、地元の農業を知るため枚方に戻ってきました。
- ひらかた独歩ふぁーむのスタート
枚方に戻ってきてから、大島さんのお父様から紹介された農園「杉・五兵衛」の野島五兵衛さんから、穂谷地区の穂谷自然農園の上武治己さんを紹介され、雇用就農の形で、また有機農業を学ぶ日々を送りました。そんな中、雇用先農家と大島さんの方向性の違いにより、就農する準備もままならない状態で、大島さんは勤め先を退職することになりました。
穂谷でのつながりや土地への思い入れもあったので、この先もなんとか穂谷で農業を続けられる方法を探しました。
その時、私が借りることができた農地は、穂谷の中でもさらに奥まった場所にある決して農業に適しているとは言えない4枚の畑でした。
今回特別にその畑にも連れて行っていただきました。里山の麓から、細い道を四輪駆動の車でぐいぐいと登って、竹林を横目にさらに先へ進んだところに大島さんが最初に手がけた畑がありました。
穂谷の奥地にこんな場所があったなんて!ひらいろ編集部も驚きでした。
昔は一望が棚田だったのですが、農地改良で谷側の田が埋め立てられて、そこにハウスを建て周年の栽培ができるようになったそうです。それでも日当たりが悪かったり、畑の形がいびつだったり、獣害があったりと決して条件が良くない里山の農地で毎年試行錯誤しながら作物を育ててきました。
野菜と栽培方法のこだわり
イタリアントマトをはじめ、ベビーリーフ、水菜、ホウレンソウなどの様々な野菜を栽培しているひらかた独歩ふぁーむ。中でも代表的な野菜と言える、イタリアントマトの栽培の様子を見せてもらいました!
イタリアントマトは果肉が厚くて水っぽくないので、トマト料理に最適です。生でも美味しくいただけます!
- トマトの木がトンネルになってる!
トマトの栽培を見せてもらうと、トマトの木がアーチ状に繋がってトマトのトンネルができています!高さは約2m近くで、人が中を通ることができる大きなトンネルです。このトマトのトンネルが畑にいくつも並んでいます。
日本の夏は蒸し暑くて通常の栽培ではトマトは夏場で枯れてしまいます。だから、株間を広くとって根を強く張らせることと、トンネル上に茂らせることで木自身に影をつくらせています。
そうすることで、厳しい夏の時期を乗り越え、トマトにとっては育ちやすい秋まで継続して収穫ができるようになるんです。
トマトは雨に打たれると割れやすいのですが、根をしっかり張っているので、その分全体に水分が分散されて割れにくくなっています。一方で、雨が極端に少ない地域でもあるのですが、周りの木々が吐き出す水分で朝は葉が濡れていることがあり、今年は夏にほとんど雨がなかった(2023年)でもトマトに一度も水やりをせずここまで育てることができたそうです。
できるだけ旬の野菜を食べていただきたいので、トマト以外にも、常時5〜6品は陳列棚に並べられるように工夫しながら作物を育てています。年間通してだと、約30品目ほどでしょうか。
新鮮な”旬”の野菜を”美味しく”食べていただきたいので、生産地の穂谷に近い場所に集中して野菜を届けていきたいです。
ひらかた独歩ふぁーむの広報を担当する六車(むぐるま)さんが、野菜をどんな風に食べたら美味しいか消費者の方に届けたい!という想いで更新されているレシピ集もクックパッドで公開されていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
献立に困った時にぜひ参考にしたいです!
穂谷で農業をする意味、そしてこれから
「穂谷で農業をするようになってから、改めて地域と農業の魅力や価値に気付かされています。」
今では地域の30枚以上の畑で様々な農作物を育てている大島さんですが、農業に向いているとは決して言えない最初の4枚の畑を手放さないのには理由がありました。
- 農業を通して穂谷の里山を守っていく
地域に暮らす先人、先輩方が山を拓き、畑や池、道を作り、きちんと手入れし、ここで農業を営み続けてきたから今自分がこの場所で農業をできていることに気づきました。
そうして守られてきた畑を、作物栽培に不向きだからといって手放してしまっては、この風景や地域の魅力がなくなって、荒地になってしまいます。
農作物の栽培の観点では農業に向かない農地でも、何か活かしていく方法はあるかもしれない。今私がこの農地の活用をあきらめてしまったら、いったい誰がこの場所の価値を見出せるのかと。
この農地からスタートした新規就農者の私にしかできない挑戦だと思っています。
だからこそ、やりがいが生まれるんです。
- 里山の保全と活用にともなう様々な取り組み
そんな大島さんの想いもあり、穂谷地区を盛り上げようと2023年に立ち上がったのが、奥ひら実行委員会です。ひらかた独歩ふぁーむを始め、レジャー施設のTHE WAKO、枚方発クラフトビール「THE HOTANI CRAFT」を作っているカンパイカンパニーによって構成されています。ホップ収穫祭、蛍の鑑賞会など精力的にイベントを開催されています。
里山保全と活用の取り組みは、私たちだけでなく、枚方市民のみなさんとも一緒に行っていけるような機会をこれから増やしていこうと思っています。
他にも摂南大学の農学部の学生が、畑にミツバチの巣箱を置いて、ハチミツ作りをする体験をしたり、大島さん自身もこれから農業を始めたいという人に向けて、新規就農者の視点から農業のノウハウを伝え続けています。
ひらかた独歩ふぁーむ 大島さんからメッセージ
穂谷の里山が生み出す恵みを皆で分かち合い、この場所が今後も必要とされる場所であり続けてほしい。農業を通じて、風景を未来に繋いでいきたいと思っています。今後は枚方の皆さんと交流の機会を増やして、「枚方に農業があってよかったね」と思っていただけるよう頑張っていきます。
まずは、穂谷の農業とつながる”第一歩”として、だるまシールを目印に、ひらかた独歩ふぁーむで採れた新鮮な季節のお野菜を食べてもらえると嬉しいです!
野菜が購入できる場所:
もより市枚方市駅、樟葉駅、フレスト香里園、和幸カントリー倶楽部(土日)など
公式サイト:https://www.doppo-farm.com/
Instagram :@hirakata.doppo.farm
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お問い合わせは、公式サイト内 お問い合わせフォームから
枚方にこんなに素敵な場所と、人がいてその価値をもっとたくさんの人に知っていただきたいなと思えた今回の取材。農業体験などのイベント情報は、今後ひらいろでもお知らせしていくので、ぜひチェックしてみてください。
今後もひらかた独歩ふぁーむの取り組みから目が離せません!
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