「大阪黒菜」という野菜をご存じですか?
大きく成長すると黒光りするほどの濃い葉が特徴の「大阪黒菜」は、明治時代から大阪で受け継がれてきた、知る人ぞ知る伝統野菜です。

黒菜は、加熱するとほんのり甘く、独特の旨味とほろ苦さが広がります。
この野菜は2023年「なにわの伝統野菜」として正式に認定されました。現在、大阪府内でもわずか5アールほどしか栽培されていない希少な存在です。
そんな大阪黒菜を枚方市の穂谷で育てているのが、ひらかた独歩ふぁーむの大島哲平さんです。

「ひらかたの黒菜」は、淀川のヨシや穂谷の竹林などの資源を活かした堆肥を使って、大切に育てられています。
今回は、5月ごろに大島さんの畑に伺って、撮影させていただきました。伝統とサスティナブルをかけ合わせた未来においしい野菜「大阪黒菜」についてたっぷりとご紹介します!



●ひらかた独歩ふぁーむ
野菜が購入できる場所:
もより市(枚方市駅・樟葉駅)、枚方モールTHE STORE、和幸カントリー倶楽部(土日)など
公式サイト:https://www.doppo-farm.com/
Instagram :@hirakata.doppo.farm
Facebook
お問い合わせは公式サイト内 お問い合わせフォームから
100年受け継がれてきた伝統の味。「なにわの伝統野菜」とは?

「なにわの伝統野菜」とは、大阪府が定める認証制度のひとつで、おおむね100年以上にわたり大阪で栽培されてきた野菜や、大阪独自の品種・栽培の系譜をもつものが認定対象となっています。
平成17年に制度が創設されて以降、これまでに24品目が選ばれており、大坂の食文化を象徴する存在として、保存と普及が進められています。
たとえば、奈良漬けによく使われる「毛馬胡瓜(けまきゅうり)」、小ぶりで粘り気のある「勝間南京(こつまなんきん)」、甘味のある「難波葱(なんばねぎ)」などがあります。どれも名前に″なにわらしさ″を感じさせますよね。
それぞれが地域の食卓で、家庭の味や郷土料理を支えてきました。
その仲間に新たに加わったのが、「大阪黒菜(おおさかくろな)」です。


明治10年代、大阪市内の住吉・西成・東住吉区周辺で、冬の青菜として自家消費用に広く栽培されていた漬菜で、冬の青菜として重宝されていました。
長く市場から姿を消していましたが、地域の生産者や保存活動の努力により、2024年2月、22品目の「なにわの伝統野菜」として認定されたのです。
枚方でよみがえる大阪黒菜。ひらかた独歩ふぁーむの取り組み
「なにわの伝統野菜」として、新たに認定された大阪黒菜。その復活を支える取り組みのひとつが、大阪府枚方市穂谷地区にあるひらかた独歩ふぁーむです。

都市近郊にありながらも冷え込みが厳しい里山地域で、大阪黒菜の育成にぴったりの環境が整っています。
農園を営むのは、脱サラ後に農業の道へ飛び込んだ大島哲平さん。

国内外で研修を積み、2015年に新規就農者として営農をスタートしました。現在では、約2ヘクタールの畑で、イタリアントマトやベビーリーフ、小松菜、水菜など多品目の野菜を手がけています。




大島さんの農業の土台となっているのが、BLOF理論(生態系調和型農業理論)に基づいた科学的な有機栽培です。

野菜の能力を引き出すことを考えると、土作りが不可欠なんです。
植物は、植えられている場所にあるものしか吸収できません。
いわば植物にとっての消化器官は、土壌なんです。
人間の腸内と同じように、微生物環境が整っていないと植物も健全に育つことができません。
良い土にしたら終わりではなく、餌になる有機物を常に十分供給し、ベストな状態をキープし続けることが重要です。
食材レポート117 大阪食文化の未来を拓く。新しいなにわの伝統野菜。「大阪黒菜」より引用
堆肥には、淀川のヨシ原保全のために刈り取られた葦(ヨシ)の繊維残渣や、地域の竹林から出る竹チップを活用。地域資源を循環させながら土づくりを行うという、サステナブルな農業を実践しています。


この独自の堆肥を用いて育てた大阪黒菜を、ひらかた独歩ふぁーむでは「ひらかたの黒菜」として販売。
冬の寒さにさらされながらじっくりと育った葉は、シャキシャキとした食感と、ほんのりとした苦味、加熱すると出汁のような旨味が特徴です。
「最初から高品質なものを作ることで、大阪黒菜は価値の高い野菜であることを浸透させたい」という強い想いがある大島さん。
その想いを一枚一枚の葉に込めて、大阪の伝統と未来につながる農業の可能性を同時に育てています。

「大阪黒菜」の栄養と味の魅力、大研究

大阪黒菜の魅力は、見た目のインパクトだけではありません。実は、栄養価の高さや味わいの奥深さにも、注目すべきポイントがたくさんあります。
まだ生産者が限られているため、詳しい成分データは少ないものの、同じアブラナ科の漬菜(たとえば広島菜や野沢菜)に共通する特徴として、カリウム・カルシウム・鉄分などのミネラルや、βカロテンなどの抗酸化成分が豊富に含まれています。

さらに、ひらかた独歩ふぁーむで栽培された大阪黒菜を分析した結果によると、一般的な小松菜に比べてブリックス糖度やビタミンCが高く、抗酸化力は約2倍という数値も。これは、体内の酸化ストレスを和らげる働きが期待できるということです。
また、野菜特有のえぐみの原因となる硝酸イオン値も、一般的な青菜のわずか1割程度という結果が。
まろやかでクセが少なく、栄養のある野菜として、これからますます注目を集めていきそうです。

▶詳細は、公式サイトをご確認ください。
どんな料理にも合う万能野菜「大阪黒菜」
味の特徴は、小松菜やチンゲンサイとは少し違った、ほろ苦さの中に感じる独特の旨味。
小ぶりな若葉は炒め物やお味噌汁、鍋の具材にぴったり。大きく育った葉は、漬物や塩漬けにして巻きずしの″のり″の代わりに使うのもおすすめです。


さらに、大阪黒菜の持つ出汁のような深い旨味を活かして、パスタや揚げ物などの洋食にも相性抜群。
和食にも洋食にも幅広く応用できる万能野菜です。レシピのヒントは、ひらかた独歩ふぁーむのクックパッド公式ページでも公開中。

「大阪黒菜」と検索して、お気に入りの調理法を探してみてはいかがでしょうか?
新たな食文化の創造へ。大阪黒菜でつくった「大阪ラーメン」
大島さんが見据えるのは、大阪黒菜の復活にとどまらない、その先の可能性です。
2024年11月、関西食文化研究会の取材で語られたのは、「大阪黒菜をトッピングに使った「大阪ラーメン」をつくりたい」という構想でした。
今、明確に『大阪ラーメン』と定義できるものがないように思います。それを大阪黒菜によって統一したスタイルにしたいのです。いつか大阪黒菜の産地が府内の別の地域にも広がって、地域ごとの大阪黒菜を使った大阪ラーメンが誕生すると面白いでしょうね。
食材レポート117 大阪食文化の未来を拓く。新しいなにわの伝統野菜。「大阪黒菜」より引用
このアイデアは着実に形になりつつあり、2025年開催の関西万博・大阪ウィーク「食べなはれゾーン」では、ラ・コギ×独歩ふぁーむ×スパイス工房 燦によるコラボメニュー「大阪黒菜のこってりらーめん」の出店が予定されています。




将来的には、大阪府内の各地で大阪黒菜が地域の味として根付く未来も夢物語ではありません。





100年受け継がれてきた伝統、環境に配慮したサステナブルな農法、そして未来へとつながる新たな挑戦。
大阪の伝統野菜といえば、大阪しろ菜や難波葱が思い浮かぶ方も多いかもしれません。そこに新しく加わった「大阪黒菜」は、まだ広く知られていないものの、そのポテンシャルの高さに私たちも驚かされました。
野菜以上の存在へと進化する大阪黒菜。
あなたもぜひ、「大阪黒菜」のおいしさと可能性を味わってみてください!
ひらかた独歩ふぁーむ 概要


●ひらかた独歩ふぁーむ
野菜が購入できる場所:
もより市(枚方市駅・樟葉駅)、フレスト香里園、和幸カントリー倶楽部(土日)など
公式サイト:https://www.doppo-farm.com/
Instagram :@hirakata.doppo.farm
Facebook
お問い合わせは公式サイト内 お問い合わせフォームから
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