みなさんは「ヨシ」ってご存知ですか?
「えっと・・・ヨシってなんだっけ?」
そう思う方も少なくないと思います。
実は、「ヨシ」は紙・糸などの持続可能な資源として注目されており、環境に優しい植物なんです。
今回は、以前ひらいろ第11号の 「環境に優しい雑貨特集」で取材させていただいた「アトリエMay」さんの商品作りに活用されている植物「ヨシ」について、もう少し詳しくお伝えしたいと思います。
アトリエMayお店紹介記事はこちら
究極の植物⁉︎「ヨシ」とは?
以前の記事でも少しご紹介しましたが、まず「ヨシ」とはなんぞやについてお伝えします。
写真を見れば、「あ、どこかで見たことあるかも」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
また、夏の陽射しをしのぐために「よしず」や「すだれ」を使用される方もいらっしゃるかと思います。
その主な材料として古来から使用されているのが「ヨシ」です。
ヨシは水辺に多く生える植物で、高さ2~3mに成長し、大群落をつくります。
ヨシは季節とその成長によって漢字が変化
ヨシは季節とその成長によって漢字が変わります。
・春は新芽し、「葭(か)」
・夏は成長し、「蘆(ろ)」
・冬は枯れ、「葦(い)」
不思議ですね!
さらに、その昔、「あし」は「悪し」で縁起が悪いということで、「善し(よし)」と呼ぶようになったそう。
つまり、ヨシもアシも同じものだったのだそうです!
鵜殿(うどの)のヨシ原
大阪府高槻市鵜殿から上牧に広がる淀川右岸河川敷のヨシの群生地は「鵜殿ヨシ原」と呼ばれ、大阪みどりの百選、関西自然に親しむ風景100選、美しい日本の歩きたくなるみち500選などにも選定されています。
古くは紀貫之の土佐日記にも登場するなど、時代を超えて地域の環境・文化・産業などと深く関わっていたことがわかりますね。
日本最大の湖「琵琶湖」から瀬田川・宇治川を流れ、京都と大阪の府境で宇治川・木津川・桂川と合流して「淀川」になります。
鵜殿のヨシ原はこの淀川の高槻市右岸に位置し、長さ2.5km、最大幅400m、面積75haあり、甲子園球場の約18倍の広さになります。
↓地図ではこのあたり
ヨシが環境に良い理由
ヨシ原の保全は動植物の生態系の保全にも役立っています。ヨシが環境に良い理由を3つご紹介します。
1,二酸化炭素酸素を吸収!
ヨシは水辺で最大の草本植物。
通常の植物と同じように、空気中の二酸化炭素を吸収して、光合成による酸素の生成を行います。
概算で植物の重さの約1.5倍の二酸化炭素を吸うため、ヨシのように大きい植物は、より多くの二酸化炭素を九州市光合成によって酸素を作り出し、地球温暖化を防ぐ役割があるそうです。
2,河川の水質浄化作用と護岸作用がある!
湿地帯に多く生息するヨシは、土の中、水の中から多くの窒素・リンや、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ケイ素などを吸い上げて大きく成長するため、窒素・リンが多くなりすぎて水中の栄養素が多くなりすぎることによって発生するアオコの発生を抑える水質浄化作用があります。
また、ヨシは地下30cm〜2mまで地下茎を伸ばして群落するため、地下にネット状の地下茎を張り巡らせます。
この地下茎が土蔵を強化し、波風や水圧による河川敷の侵食を防ぐ役割もあるのです。
3,生態系を保全してくれる!
鵜殿のヨシ原では多くの生物が生息しています。
ハヤブサ、ノスリ、オオタカなどが見られるのは生態系が豊かな証拠。昆虫・魚類・爬虫類・両生類・哺乳類など多様な植物の住処にもなっています。また、夏には2万羽余りのツバメたちが渡りの前にねぐらとして利用しています。
ヨシの収穫の流れ
毎年2月頃にヨシを刈り取り、束ねて、紙材料を確保して、ヨシ焼きが行われます。
それによって4月に新芽が生えます。
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(協力:鵜殿ヨシ原研究所×山田兄弟製紙株式会社)
ヨシはサステナブル素材
持続可能な新素材が注目される中、古来より日本で自生するヨシは理想のサステナブル素材です。
自生植物であるヨシを生育するためにはヨシ原の手入れは欠かせません。
しかし、種まきや水やり、肥料などを必要とせずに毎年収穫することができるのです。
環境問題以外にも世界的に問題視されている労働問題的にもやさしいです。
なぜ、今ヨシ糸なのか?
最近、ニュースでもよく聞く「サステナブル」という言葉。
直訳すると「持続可能な」という意味。地球温暖化や食糧問題、ごみ問題など現在私たちが直面している問題に対して出来ることから行動して未来に繋がる持続可能な暮らしを実践しようという意味で使われています。
7月よりプラスチック製のレジ袋が有料化となり、“マイバック”を持ち歩くことが習慣になった人も多いのではないでしょうか?
そのほか、環境に配慮したものを選ぶことは私たちの日々の生活でも実践できる行動の1つ。
「ヨシ糸」ができるまで
ペーパーレスの時代にヨシ紙を普及させていくのは難しい。もっとヨシ製品をたくさんの人に知ってもらい、もっと広がりを持たせるにはどのようにすれば良いか?
2020年に合同会社竹繊維研究所と出会い、ヨシ繊維を取り出してヨシ糸を製造・販売するライセンス契約を結び、 2021年、ヨシを使ったヨシ糸の開発が始まりました。
どんなヨシ糸の製品があるの?
ヨシのふきん770円(税込)
ヨシストール3,850円(税込)・ヨシケット6,600円(税込)
アトリエMay塩田さんのヨシ紙との出会い
15年ごろ前に「ほっこりする和紙の明かりを伝えたい」と考え交野でギャラリーカフェを始めた時、鵜殿ヨシ原研究所の小山所長さん(私市にある大阪市立大学附属植物園の元職員さん)が塩田さんのお店にやってきて「淀川のヨシでヨシ紙が出来たんだけど、常設販売して欲しい」と頼まれたことがきっかけで、 「淀川のヨシを使って商品開発」をするようになったのが始まりだったそうです。
それが全ての始まり。郷土史や植物学について、小山さんから学ぶことでヨシについての興味が深まり、どんどんおもしろくなっていったと言います。
衣食住のうち、「食」はヨシの粉を使った食品造り、「住」はヨシのこれまで商品化されてきましたが、今年「衣」に挑戦したい、ということで、2021年3〜4月までヨシ糸プロジェクトを実現するためのクラウドファンディングを実施し、見事達成!
「繊維工業は環境を汚してしまうものだ」というイメージを覆す一大プロジェクトとし、スタート。しかし繊維となると塩田さんだけですベて完結して商品化することは不可能・・・
ということで、ヨシの繊維を製造し糸を紡績するところまでをアトリエMayさんが管理し、 そのあとは様々な事業者さんにお願いして製品になっていく中で様々な人のアイデアが広がり、 新しい商品が生まれていくところが今までと違う点。
現在ヨシ糸を使った商品開発が、枚方市内のつつしたの樋口メリヤス工業さんなどのメリヤス工場などたくさんの方が参加し、プロジェクトが進行しているところです。
時代にも相待って、オーガニックなヨシを使うことが、過去で最も反響があり業界での評価も大きかったと塩田さんは言います。
アトリエMayのヨシの活用
ヨシに着目し、長年ずっと普及に尽力されているアトリエMayの塩田さん。
行灯・障子・襖などヨシ紙を使った安全、安心、豊かな生活を提案されています。
和紙を使ったオリジナル創作照明55,000円~(税込)
ヨシについてもっと知りたい!
アトリエMayさんで最近発行されたこちらの素敵な冊子「UDONO reed yarn PROJECT」でヨシについて、ヨシ糸について、たっぷりとご紹介されています。
ご覧になってみては!
アトリエMay塩田さんより
塩田真由美さん「何にも属さず、群れずにヨシのように風に吹かれて、いろんな人の協力でこれまでたくさんのことに携わってきました。
今だけを見ると、地元枚方のため、環境のために良い活動をしているように見えるかもしれませんが、私の気持ちとしては決して地元のため、環境のためにやってきたわけではないんです。その場その場で良いと考えたことを判断して、他とは違う差別化をしてきたら、結果的に地元のためや環境のために良い活動になっていただけのことなんですよ」
お店では私達が携わった商品を販売しています。地域資源の商品企画、デザイン相談もお受けしていますので、気軽にお越しください!
アトリエMay 店舗概要
●アトリエMay(メイ)
住所:大阪府枚方市大垣内町3-3-7
電話:072-845-4039
営業時間:12:00~18:00(都合により営業時間を変更する場合があります)
定休日:土・日・祝日・不定休
*都合により店舗はクローズしている場合があります。
アクセス:
京阪電車枚方市駅・宮之阪駅徒歩8分
京阪バス官公庁団地バス停徒歩3分
駐車場:なし
近隣にコインパーキング多数あり
お問い合わせ:InstagramのDMもしくは公式サイトよりお問い合わせください。
公式サイト
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