大阪府枚方市にゆかりのあるアーティストやクリエイターに焦点を当て、生き方や仕事、作品へのこだわりや思いについてお伺いする連続インタビュー企画。
第10回目のゲストは、画家の吉田絵美(よしだ えみ)さんです。
吉田さんは近畿大学文芸学部芸術学科ガラス芸術コースを卒業し、ステンドグラスやバーナーワーク、家庭用オーブンのガラス絵付けなど、キラピカを平面で表現するアーティストに。普段は菅原生涯学習市民センターで働き、空いた時間はアトリエで黙々と作品を制作。不定期で展示会に出展することも。2021年の近代美術協会展では内閣総理大臣賞を受賞されました!
今回は吉田さんのお仕事や生き方、作品について、そして枚方の好きな場所や関わりなどについて、ひらいろ編集部がたっぷりお話を伺ってきました。
【ABOUT】吉田絵美/Emi Yoshida
枚方育ち、枚方市在住の画家。幼い頃から画家志望でキラキラしたものが大好き。大学ではガラス造形を専攻し、キラピカを平面で表現するために試行錯誤し今の作風に。普段は菅原生涯学習市民センターで働き、空いた時間はアトリエで黙々と作品を制作。不定期で展示会にも出展している。2021年の近代美術協会展では内閣総理大臣賞を受賞。
webサイト:http://emi.frenchkiss.jp/
画家のお仕事について
ー吉田さんは大学ではどのようなことを学ばれていたのですか?
大学は近畿大学文芸学部芸術学科ガラス芸術コースを卒業しました。
ガラス造形とは、ステンドグラスや透けガラス、蜻蛉玉などのことです。ガラス全般をざっくり学んで、大体わかったなぁというころには卒業でした。
大学4年間ずっとガラスを専攻していたわけではなくて、近畿大学は最初に4つのゼミが選べたんです。私は最初の年に陶芸、油彩、版画、ガラスの4つを選んで、2年目で2つに絞って版画とガラスを選択しました。そして最後の2年間はガラスに絞って学びました。
ーある程度幅広く網羅されたからこそ、今に繋がっているのでしょうね!
大学の間は大学でしかできないことをやろうと思っていたんです。だから大学では主にガラスについて学びました。
大学卒業後は、光っているものが何でも好きなので引き続きガラスで何かしようかなぁと思っていたんですけど、ガラスで何かを作るというのは、場所もコストも掛かりますし、環境的にすごく厳しかったんです。足元をガラスまみれにしてもよい環境を手に入れるのがまず大変なんです。ガラスが高いし道具も高いし・・・(笑)
それで、なんとかピカピカしたものできないかなぁと考えた結果、今の作品に至っています!
ーなるほど!それでピカピカした作品を絵画というかたちで表現されているんですね。
ガラスは続けるにもなかなか続けられないんですよね。それでどうにかできないかなぁと続けてきた結果が今です。以前はボールペンで描いていました。
普段の活動場所
ー(今回取材でお伺いした枚方市内のアトリエにて)こちらはアトリエとして使われているのですか?
はい、ここはアトリエとして使っています。普段は長尾にある菅原生涯学習市民センターで働いているんですが、このアトリエはその仕事に就いてから、半年めの夏に借りました。
▼実はひらいろでは、以前生涯学習市民センター記事で取材させていただいておりました!
ここに住んでいるわけではなく自宅は別でアトリエから自転車で10分くらいのところです。自転車で通えるところで一番広くて安い部屋を探した結果、このお部屋がアトリエになりました!
ー普段はここで画家としての活動されているということですね。静かで集中できそうですね。
大変静かです。何より良かったのが日当たりなんですよ!前に何もないので。自分でも良いところ借りたなぁと思います!あとはここが1階というのもありがたいんですよ。作品を運ぶのが大変で……ここだったらなんとか自力で降ろして車に乗せられるかなぁと。入り口も広いのでUターンできて大きな作品でも運べます!
▼こちらは縦1620mm×横3360mmの迫力のある大きな作品!運搬するだけでも大変。
おいたち・今のお仕事に至るまでの経緯や職歴
ー大学を卒業されてからは具体的にどのように過ごされてきたのでしょうか?
大学卒業後はちょうど不況の時期だったんです。就職するの辛かったので、徒歩圏にあった画材屋さんに就職して3年間頑張りました。でも色々あって心が折れちゃって、1年間無職でした。それからは枚方のあちこちの機関のお力を借りて、児童館に就職しました。
半年間頑張ったんですけど、子供たちのことをなかなか理解できなくて、安全を見守ると言ってもどうしたらいいか私にはわからなかったんです…。児童館を辞めてからの1年間はアルバイトをして、最終的には菅原生涯学習市民センターという今の職場に就職しました。
おかげで今の職に就いてからは3年半続けられています!今の職場では主にイベント関係を担当しています。
ー職が変わっていく中でも続けてこられた絵画ですが、ガラスでの制作活動が難しいと感じてボールペンでの制作を行い、結果的に今の絵に辿り着いたのは、どういった経緯があったのでしょうか?
実は、お見合いに行った会場の隣で絵のイベントが開かれていたんですよ。
そこで(このキラキラの絵の具に)一目惚れして!残念ながらお見合いは上手くいかなかったですけど(笑)
絵の具と結婚しました!
ー吉田さんの作品に描かれているものはどういったものですか?
これは心の中の印象を描いています。私が頭がうわぁとなっているのをそのまま絵として出力するんです。そうすると、とりあえずピカピカしているし綺麗だから、悪い話じゃないのかなぁと安心して夜眠れるんです。
ーなるほど。心のモヤモヤを描き出しているんですね。
そうなんです。心のモヤモヤをそのまま出しています。抽象画だと大抵の人が難しいことを言っているんですけど、特に何も難しくはないです(笑)
ー色がたくさん使われているのが素敵ですね!
私は赤が好きなんですけど割といろんな色を使っています。
金の線は帯のようなものを表しています。私の中では言語に近くて、金の線で手前にあるものをきちんと包んだり指したりしているんです。
直接キャンバスに盛り上がる絵の具で主線を引き、背景の下地に黒を塗ります。モチーフに色付けしたら、背景に凸凹になるメディウムというものを塗るんです。そしてその上に金、ラメ、さらに金を描いて光を追加します。
思っていることを上手に喋ることができないので絵を描いているというのもあります。絵の奥には過去のものがみんな似ているんだけれど、今一番心の手前にあるものをそのまま出して、とりあえず悪い話じゃないよね!と自分の中で解釈します。
最新情報ですが、2021年11月18-24日に開催された、近代美術協会展@東京都美術館では内閣総理大臣賞を受賞しました!
ーすごいです!!おめでとうございます。絵画の制作にはどのくらい時間かけられているんですか?
丸一日休みがあれば、大体2日間くらいです。
ーそうなんですか!意外と早いんですね!
仕事をしながらなので1週間かかることもあります。要は絵の具が乾くか乾かないかの問題なんですよね。夏場は早いんですけど雨季は待てど暮らせど乾かないのですが・・・
ーお仕事されながらなので大変なんですね。
フルタイムで週に4日働いています。18時に帰宅して夜ご飯を食べて、19時頃にアトリエに来て描いて、遅くても22時半には家に帰って寝るという感じです。
ー働いた後に描いているんですね。
仕事前に描いたら手がドロドロになるので(笑)本当は朝に描きたいんですけど、さすがに手が洗い切れるかわからない状態では行けないのですよ。
人生のターニングポイント
教職に就きたくて大学3年生のときに教育実習の前の介護実習に行ったんですが、そこで利用者さんに叩かれてしまったことが怖くて辛くて、1年間大学を休学したんです。その挫折が1年間長引いてしまって…。あの頃は何もかもが怖くて、怖い以外の単語が出てこなくなってしまっていたんです。
怖いと思うことに対しても疲れていて、もう何も考えたくなくて絵を描き始めたというのが最初のターニングポイントですね。
それで描いてたら1年でなんとか大学復帰できたので、やっぱり私にとって絵は大事なんだなぁと思いました。
(先生は)向いていなかったんだと思います。幼少期からなりたいものが画家だったんですけど、適正適職検査をしても1番にアーティスト、2番に宗教家、3番目に教職という結果で、どうしろと?という。
その中でなんとか食べていけそうなのが教職しかないと思って教職を頑張って勉強していたんですけど、私はどう頑張っても無理だという結論が大学3年生のときに出ましたね。どうやって食べていこうかと困りに困った結果、今があります。
ー画家だけで食べていくのはやっぱり大変ですか?
悲しいですけど、まだ画家だけでは食べていけないですね。でもおかげさまで本当にたくさん展示の依頼を頂けるようになりました。
展示会場だけですが作品も売っています。やっぱりネットを使って売るのは難しくて。上手く写真が撮れないんですよね。どうやって1枚の写真だけで伝えたらいいかわからなかったり・・・上手くできたらネットでも売りたいんですけど今の仕事が続いている限りはネットの方はあまり頑張るつもりはありません。
ー菅原生涯学習市民センターの方ではイベント担当ということでしたが、企画から担当されているのですか?
そうです!塗り絵のイベントであれば、まずなぜ塗り絵をするのかというところから始まって、いくらでするのか、誰を相手にするのか、何を用意するのか、全て決めています。当日も先生として参加しているので!
影響を受けた人や作品
実はないです。
見ての通り、このアトリエは何もない部屋で私の頭の中にあるものをそのまま出しているだけなのです。
でも、感謝をしている方はいます。川瀬大樹さんという画家さんがいるんですけど、その方に今の画廊をご紹介いただいて、高槻のデパートにも呼んでくださったんです。川瀬さんのおかげでずいぶんといろんなところで展示できるようになってすごく感謝しています。
川瀬さんすごく面白い方なんですよ!ジラフ(きりん)と鯨の可愛い絵を描いてるんです。売れっ子さんです!いつも展示会にも来てくれます。
「アートムーブ展」という展示会に一昨年まで毎年出してたんですけど、そこで川瀬さんが上位の賞を受賞されていて展示会の後の交流会で同じ席になったんです。それで私は次の展示会が枚方市で決まっていたのでそのDM渡したんですね。そしたら来てくださってすごくファンになってくださったんです!色んなありがたいお話をいただけるようになったのは川瀬さんのおかげなので大変ありがたいなぁと思っています。
今後の展望・やりたいこと
野望で言えば、自分の美術館建ててみたい!野望だけ言うならタダなので(笑)夢はそこですね!
とりあえずは、引きこもりになって作品を描きたいです(笑)
ー本当に絵を描くのがお好きなんですね!
描いてる時間がいちばん好きです。展示会の準備は他の人がやってくれると嬉しいんですけどね〜。
今後のイベント、展示会の予定
ー展示は依頼があって出展されているという感じですか?
まずはあちこちの公募に出して、通ったら展示をするというものです。通った先がギャラリー主催であれば「次これ出しませんか?あれ出しませんか?」と呼んでもらえるようになるんですよ!呼んでもらえるようになると、呼んでもらったものに出すという流れです。
いただいた賞の副賞として個展が付いていることもあります。
一昨年にZERO展という展示会で大賞をいただいたんです。その大賞の記念展として京橋画廊では個展をさせてもらったんですけど、オーナーさんにすごく気に入ってもらえて!今年もやってくださいってお呼ばれしました。
▼直近の今後の展示会予定
イグエムアート展
2021/12/13-12/18 @ギャラリー檜(東京)
2022/1/20-1/25 @イグエムアートギャラリー(大阪)
※ギャラリー巡回、f20号1点展示予定
アートカクテル主催第4回公募展オーディエンス賞受賞グループ展2022
2022/1/22-2/2 @ギャラリーアートカクテル(大阪)
※ギャラリー公募情熱展オーディエンス賞受賞者グループ展、f10号を4点ほど展示予定
ギャラリー39(大阪北新地駅すぐ、大阪第2ビルの額縁店)
しばらく常設で作品展示販売予定もあります。
ーすごいスケジュール感ですね!こんなにたくさん!
もうギュギュギュ!ですよ!
枚方歴、関わり
枚方に来たのは高校1年生の夏です。それからずっと枚方でいます。枚方では五六市が好きですね。
ーよく行かれるんですか?
昔は出店してましたしてた!大学生の頃にはくずはふれあい手作り市に出店してお世話になっていました。最近は仕事の休みが直前までわからないので抽選に参加できなくて。
ー絵を売ってはるんですか?
絵も売ってましたし、ガラスの小物も売ってました!
枚方の好きなお店・場所
枚方宿の街道にある雑貨屋Repos de midi(ルポデミディ)さんが好きです!
あと枚方市駅寄りの梅が有名な神社のそばにある草々徒も楽しかったです。
あとは菅原生涯学習市民センターにある、lei cafeさんも美味しいです!カレーライスはお出汁3種。
あと鳥丼についてくるきゅうりの漬物がすごい好きで。漬物だけ売ってくれないかなぁとずっと思っているんです(笑)テイクアウトしたいぐらいおいしいんですよ!
ー吉田さん、貴重なお話をありがとうございました!
【ABOUT】吉田絵美/Yoshida Emi
枚方育ち、枚方市在住の画家。幼い頃から画家志望でキラキラしたものが大好き。大学ではガラス造形を専攻し、キラピカを平面で表現するために試行錯誤し今の作風に。普段は菅原生涯学習市民センターで働き、空いた時間はアトリエで黙々と作品を制作。不定期で展示会にも出展している。2021年の近代美術協会展では内閣総理大臣賞を受賞。
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