個性派書店やZINE作家が集結! 蔦屋発祥の地・枚方の 『ひらかたブックバザール』潜入レポ

目次

\枚方発、本でつながるひらかたのブックイベント/
独立書店やZINEが集う「ひらかたブックバザール」

2025年6月28日(土)、大阪・枚方市にあるニッペパーク岡東中央公園で開催されたのは、本と人、本とまちをつなぐブックイベント『ひらかたブックバザール』

全国から個性豊かな書店や出版社、ZINE作家たちが集い、公園にずらりとテントが立ち並びました。

真夏のような日差しのもと、新刊・古書、ZINEの販売に加え、読み聞かせや雑貨、カレーやコーヒーの出店など、本だけにとどまらないラインナップが来場者を迎え、大いににぎわいを見せていました。

会場のあちこちでは、出店者と来場者が気さくに言葉を交わす姿が見られ、ゆったりとした空気のなかにも、本への情熱が感じられる時間が流れていたのが印象的です。

今回はひらいろ編集部も『ひらかたブックバザール』の会場に行ってきましたので、現地の空気感や出会った人との声を交えながら、イベントの魅力をお届けします。

◇本と人に出会う本の縁日「ブックバザール」

『ひらかたブックバザール』は、本好きによる本好きのための、本との出会いと人との交流を楽しむ即売イベント。全国から集まった60以上の出店がずらりと並び、新刊本からZINE、古本、雑貨、カレーやコーヒーまで、にぎやかな「本の縁日」が広がりました。

当初は16時までの予定でしたが、当日の暑さ指数の上昇を受け、14時での終了が決定。それでも開始直後から会場は来場者でにぎわい、思い思いに本を手に取る人たちの姿が。

会場となったのは、枚方市駅近くのニッペパーク岡東中央公園。通りがかりにふらっと立ち寄った人が、気づけばZINE作家と話し込んでいたり、古本を手に取り笑顔で話をしている光景があちこちで見られました。

販売だけではなく、そこには「本を介した会話」や「心のやりとり」があり、会場全体があたたかい空気に包まれていました。

どのブースにも、その人だけの物語や想いが込められていて、立ち止まらずにはいられない空気が漂っていたのが印象的です。

そんな『ひらかたブックバザール』の誕生の背景には、主催者のみなさんのある強い想いがありました。

文学フリマや一箱古本市などの即売イベントが各地で盛り上がる一方で、依然として「若者の活字離れ」「書店の閉店」など暗いニュースが絶えない出版業界。しかし、リアルな場で本のつくり手と読み手が出会う機会は、人の心を動かし、活字への関心を呼び戻すきっかけになるはず。

そんな中、「もっと気軽に、もっと自由に、本の楽しさと出会える場を枚方からつくれないか」という想いから、このイベントは生まれました。

とくに屋外での開催にこだわったのは、「たまたま通りかかった人が本に出会う」「子どもたちが公園で遊びながら本に触れる」。そんな偶然の出会いと温度感を大切にしたかったからといいます。

▶詳しくは、ひらかたブックバザール公式サイトを読んでみてください。

また、開催地・枚方は、実は「本の街」として今、注目を集めています。江戸時代の出版文化を支えた蔦屋重三郎の名を冠した「蔦屋書店」発祥の地であり、近年も独立系書店やブックカフェ、ユニークな出版社が次々と誕生している街でもあります。

ひらガール

『ひらかたブックバザール』は、そんな本の文化が根づくまち・枚方だからこそ実現できた、地域と本をつなぐ新しい試み。書き手・読み手・売り手のあいだに、温かな交流が広がる空間は、イベントを超えて「文化の循環」が感じられる場でもありました。

◇読んで、触れて、話したくなる。ブックバザールで見つけた本との出会い

手に取った瞬間、装丁の手ざわりにワクワクし、ページをめくると、誰かの暮らしや想いがそっと語りかけてくる。
『ひらかたブックバザール』の会場には、そんな「読む」だけでは終わらない、感じる本との出会いがあふれていました。

ZINE、自費出版、リトルプレス……。それらは大きな書店には並ばないかもしれないけれど、一冊一冊に物語と想いが詰まっています。

そして何より、つくり手がその場にいて、本の向こう側のストーリーを直接聞けることも、ブックバザールの醍醐味。

ここからは、イベント当日に出会った、印象的な本とそのつくり手たちを5つご紹介します。

日々図案室

「母のレシピを自分だけで終わらせるのはもったいないと始めたのがZINEづくりだったんです」
そう話してくれたのは、お母さまから受け継いだおやつのレシピを、物語として1冊のZINEに仕立てている日々図案室さん。

印刷や製本もすべてが既製品ではなく、自宅のプリンターで出力したり、印刷会社と相談して紙の風合いを調整したり、寄せ集めた紙を自分の手で糸かがりして製本するという、こだわりと手間の詰まったZINEたち。

その丁寧なつくりからは、「好き」がぎゅっと詰まった世界観がにじみ出ています。

編集部が今回購入したのは、プリンをテーマにした一冊。この本をつくることになったきっかけは、虎好きの娘さんからの「今度は虎のお話にしてほしい」というリクエストだったそうです。

そこから色が似ているというユニークな発想で、「プリン」と「虎」を掛け合わせた物語が生まれました。

会場では、そのZINEの世界観にちなんだおやつ、マーマレードとブッククッキーも販売されていました。

コーヒー片手にZINEを読み、お話に出てくるおやつをほおばる。そんな贅沢で幸せな休日を想像させてくれる、優しいZINEとの出会いでした。

katsura books

東京を拠点に活動するひとり出版社「katsura books」。

小さなブースの前で本を手に取りながら、本づくりの背景をたくさん教えていただきました。「作り手に会える」というのは、本との距離がぐっと近づく体験です。

並んでいた本の中でも特に印象的だったのが、評伝+画集『塔本シスコ 絵と絵と絵の人生』。

塔本シスコさんは、絵の具を触ったこともなかった53歳の主婦。ある日、画家の息子のキャンバスに手を伸ばし、その後91歳で亡くなるまで、色鮮やかで自由な絵を生み出し続けました。

そして驚いたのは、そのシスコが絵を描いていたアトリエが、なんと枚方・招提団地にあったこと。遠い画家の物語が、急に親近感を抱いた瞬間でした。

評伝でありながら画集としても楽しめる一冊。めくるページごとに、自由で大胆な色彩が生き方を表しているように感じました。

モリコレbooks

関西を拠点に、一箱古本市やイベント出店をしながら、時に四国や瀬戸内にも足を運ぶモリコレbooksさん。

ブースには、京都の飲食店を1000軒以上食べ歩いた友人がつくったという渾身のグルメZINEと旅と本を愛するモリコレbooksさんがセレクトした古本が並んでいました。

「街歩きZINE」というジャンルそのもののおもしろさとZINEという形だからこその自分の視点で街を切り取る自由さが、実際にその場所へ行ってきたくなる衝動に駆られます。

モリコレbooksの選書は、街とZINEと人とをつなげてくれるのが魅力です。

えほんのトビラ絵

子どもが本と出会う最初の入り口——。
それが絵本です。

絵本のトビラ絵さんのブースには、そんな最初の一冊を丁寧に選びとろうとする想いを感じました。

絵本に精通した出店者がセレクトした本の中で、とくに目を引いたのが、北海道の出版社が出している「絵本の読み方」にまつわる一冊。

絵本を「読んであげる」だけでなく、「一緒に感じ、育てていく」ものとして捉える視点が印象的で、読み手である大人にも学びなる内容です。

本を読む、という行為の原点に立ち返るようなブース。

やわらかいタッチの絵と優しい物語で、親子のコミュニケーションを豊かにしてくれる本がたくさん並んでいました。

古書ますく堂

「アンパンマン!」と目を輝かせて手に取った絵本。うれしそうに絵本を握りしめる姿に、周りの大人もほっこり。

大阪市内にお店を構える「古書ますく堂」は、そんな日常のなかの一場面をすくいとるような古本屋さん。

丁寧に並べられた本たちは、誰かの時間や記憶を乗せた「物語の続き」のようにも感じられます。

新刊本にはない、少し色あせたカバーや折れたページ。けれどそれこそが、古本の魅力であり、その本を読んだ誰かの存在を感じさせてくれます。

「誰かの本が、また誰かの手に渡る」。そんな循環が、自然に生まれていたのが古書ますく堂さんのブースでした。

『ひらかたブックバザール』を歩いて感じたのは、本は読むだけのものではなく、人と人、人と街をつなぐ力を持っているということでした。

並んでいる本を眺め、思わず声をかけたくなったり、自分の中にある小さな感情がふっと動き出したり……。そんなささやかな変化が、この公園の一角でたくさん生まれていました。

つくり手の顔が見える本と出会える場は、今の時代だからこそ、より貴重なのかもしれません。

ひらガール

この日出会った本が、誰かの本棚におさまり、やがてまた別の誰かの手に渡っていく循環が、枚方という街の中で育まれていく未来を想像すると、なんだかとても楽しみですね。


そして、この『ひらかたブックバザール』を主催されたひらかた文学の会のまとも書房さんが、枚方をもっと「本の街」にしたいという想いから、新たな挑戦に踏み出します。

2025年7月13日、枚方にシェア型書店「まとも書房」がオープン予定!
一人ひとりが棚主になって、自分の好きな本を紹介・販売できる、新しいかたちの本屋さんです。

まちと人と本をつなぐ、もうひとつの物語が、ここからまた始まります。
本が好きなあなたも、読者として、棚主として、ぜひ覗いてみてはいかがでしょうか。

▶「まとも書房」についての詳細は、公式noteやWebサイトをチェックしてみてください。

◇ひらかたブックバザール 概要

■ひらかたブックバザール
開催日: 2025年6月28日(土) 
時間:10:00〜14:00
場所:ニッペパーク岡東中央公園
公式アカウント:https://note.com/hirakatabook
instagram:@hirakatabook
【企画運営】
主催者:ひらかた文学の会(まとも書房 ぽんつく堂 東シベリア集団 合同会社HAMARO)
連絡先:久保一真(080-1499-1991/kubo@matomo-shobo.com)

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