150年前の姿へ戻そう。枚方の人気カフェ「ルポ・デ・ミディ」が目指すもの

ルポデミディの店内

枚方市駅から枚方公園駅に続くレトロなまち並み「歴史街道」沿いに佇むカフェと生活雑貨のお店「ルポ・デ・ミディ」。

明治元年に建築された古民家を改装した店内は、どこか懐かしくゆったりとした時間が流れている。

大阪北部地震の経験から、いつどうなるかわからないなら、本当に好きなことをして暮らしていきたいと思ったんです。

そう語るのは、枚方宿に佇む人気店「ルポデミディ」オーナーの宮地さん。

オーナー宮地さん
宮地さんとルポ・デ・ミディのスタッフさん

開業から13年。いつの間にか増えていった取扱商品や業務を一度全てストップし、見つめ直すことに。装飾や間仕切りを外し、建物を“すっぴんの状態”に戻そうと、約半年間にわたって行われた改装工事が昨年の冬、ついに完成を迎えた。

改装のテーマは“150年前の姿に戻すこと。

災害後、傷つきながらも崩れなかったお店を見たとき「この建物を守りたい」と思ったんです。

古き良き道具、人との繋がり、おいしく体に優しいカフェメニュー。ここにくると、どこか懐かしく、穏やかな気持ちになれるのはなぜだろう?

—— そんな疑問を胸に、2020年春、宮地さんの元を尋ねた。

懐かしいものに触れたとき、気持ちをリセットできた

2階のカフェスペース

ー 「ルポ・デ・ミディ」リニューアルオープンおめでとうございます。お聞きしたいことは沢山あるのですが、まずは宮地さんがお店を始めたきっかけについて教えていただけますか?

宮地さん:お店をオープンしたのが2007年だから、もうすぐ13年ですね。もともと、この建物は、ほとんど誰も手を入れていないような、築150年の古い古民家だったんです。

私自身、ルポ・デ・ミディを始める前は、お店をプロデュースしたり、店舗を作っていくような仕事をしていました。もともと、大の仕事好き。ONとOFFの切り替えがなかなかできないタイプだったこともあって、当時はちょっぴり人生に疲れてしまっていたんです。

そんな鬱々とした気持ちをリセットしてくれたのが、和歌山県の田舎にある旦那さんのおばあちゃんの家でした。生まれ育った故郷じゃないのに、なぜかすごくほっとして。砂利道とか、古い家とか、どこか懐かしい風景に触れたとき、凝り固まっていた肩の力がふっと抜けたんです。

「ああ、今までがむしゃらに働いてきたけれど、案外何もしないのもありなんだな」って。

その数日後「たまには気分転換に散歩でもしようか」と、旦那さんと散歩にでかけた通り道で、現在のルポ・デ・ミディの物件に出会いました。

外観

ー そうだったんですね。物件を見たとき「ここだ! 」と何か感じるものがあったということでしょうか。

宮地さん:和歌山の主人のおばあちゃんの家に少し似ていたんです。どこか懐かしく、ほっとする雰囲気がありました。

元々お店を作るのが仕事だったから、物件を見るたびについつい「この建物は、どういう風に活用するのがいいんだろう?」と考えちゃう癖があって(笑)

カフェメニュー

ー 宮地さんとしては、この物件はカフェだと。

宮地さん:そうそう。ここは絶対カフェだと。

自分でも無意識のうちに「誰か、ここでカフェをやったらいいのに」と呟いていたみたいなんです。カフェができれば、人が集まって、コミュニティが生まれる。自分の住むまちがどんどん面白くなっていくんじゃないかと、すごくワクワクしました。

そうしたら、隣で私の言葉を聞いた旦那さんが「じゃあ、君がやりなよ」と言ってくれて。それが全てのはじまりですね。

ー もともとカフェをやってみたいという思いはあったんですか?

宮地さん:いえ、全くなかったんです。ケーキもコーヒーも作ったことなくて(笑)

ー そうだったんですか!

反対されると思っていた近隣の人もすごく優しくて、もうカフェをやらない理由がなくなっちゃったんです(笑)そこから2年間は裏の住宅に住みながら、開業の準備を進めていくうちに、どんどん楽しくなってきちゃって。

カフェができれば、人が集まる。まち全体を楽しくしたい

店内の雑貨スペース

ー 宮地さんはこれからお店を始めたい方に向けて「開業ゼミ」も開催されていますよね。

宮地さん:自分のお店だけじゃなく、せっかくならまち全体が盛り上がっていくほうが楽しいと思うんです。

個人店では、メディアに取り上げてもらえなくても、まち全体が変わっていけば、それはニュースになりますよね。

知識がない、経験がないということは、確かにこれから開業する人にとっては不安かもしれない。だけど、本当に「今だ!」っていう瞬間に巡り合えたらみんなすごいパワーが出てくると思うんです。

オーナー宮地さん

私自身がまさにその代表例だと思っていて。

開業にあたって十分に資金がなかったから、できるところは2年間で少しずつ自分たちの手で改装に取り組めたし、歴史街道沿いで毎月開催されている「枚方宿くらわんか五六市」を通して、たくさんの人たちと出会うことができた。

時間をかけたからこそ、巡り合えた人たちとの繋がりのおかげで、今のルポ・デ・ミディや私があると思っています。

台風や地震。自然災害で見つめ直したお店のあり方。

2階カフェスペース

ー 今ではたくさんの人たちに愛される人気店になったルポ・デ・ミディですが、半年の休業、そして改装に至ったきっかけについて教えていただけますか?

宮地さん:改装のきっかけは、2018年に起こった地震と台風でした。今まではどこか他人事だった自然災害が、自分たちの身に降りかかってきた時「いつどうなるかわからないなら、がむしゃらに頑張ってきたことを一度見直して、これからは自分たちが本当に好きだと思うことをして暮していこう」と思ったんです。

商品のストール

ー 2018年の自然災害は本当に大きな衝撃でしたよね。ついつい忘れてしまうけれど、当たり前は何ひとつ存在しないんだなと改めて思い知らされるというか。

宮地さん:本当にそうですよね。この建物、特に古いから……地震が来た時は本当にもうダメだって思って。

でも、崩れなかった。災害後、傷つきながらも崩れなかったお店を見たとき改めて「この建物を守りたい」と気づかされました。

改装のテーマは「RE-OLD」。この建物を建築当初、150年前の姿に戻そうと思ったんです。

ー 150年前の姿……ただ、新しく、美しく改装するだけではダメなんですね。

宮地さん:改装の背景には、今まで以上に私たちが暮らすまちの自然であったり、環境に目を向けていきたいという思いがありました。

改装工事にあたっても、できるだけゴミを少なく、再利用できるものはどんどん活用していこう。余分な装飾や間仕切りは、できるだけ外して、建物を“素”の状態に戻したいと思ったんです。

ー “素”の状態。

宮地さん:うん、女の人がお化粧を落として“すっぴん”になっていくようなイメージに近いかな。建物にも人間にも、きっとそういうすっぴんの魅力みたいなものがあると思うんです。

ー 改装前のお店の雰囲気も好きでしたが、今はよりリラックスできるというか、この場所にいるだけでホッできるような……ちょっと不思議で、懐かしい感じがするなと思っていて。

宮地さん:“素”の状態のものに触れると、人って素直になれたり、リラックスできたりするんじゃないかな。呼吸も深くなるし、自分の体や心にも向き合えるようになってくる。

きっと私たちは「便利」に慣れすぎちゃったんだと思います。150年前の暮らしは、今よりも不便だったかもしれないけれど、もう少し大きな視点から見た「豊かさ」があっただろうし、まちも人もずっと元気だったはず。

進化しつつも、時には立ち止まったり、ちょっぴりリラックスしたりする時間も大事だと思えるようになったのは、この数年の私自身の大きな心境の変化ですね。

ー 今後のルポ・デ・ミディの展望や大切にしていきたいことなどあればぜひ教えてください。

宮地さん:今までのルポ・デ・ミディは「主義主張」というものをあえてやってこなくて。どちらかといえば「緩やか・ニュートラルであること」を意識してきた13年だったと思います。

でも、これからは少しずつ意思表示もしていきたい。

その1つが、改装後のこの建物。人が好きで、古い建物が好きで、そういうものに触れている時、私は心の底からホッとできる。本能的に「ああ、好きだな」と思うんです。

生きている以上は、やっぱり真剣に楽しんで、真剣に働いていきたいじゃないですか。

うなぎの寝床

私たちがお店で取り扱う商品は、昔の人たちが守ってきた伝統にちょっぴりアレンジを加えて、新たな命が吹き込まれたものばかり。ずっと使えて、ずっと愛せるものだと誇りを持っています。

だからこれからは、お店の在り方や取り扱う暮らしの道具を通して「私たちが大切にしたい考え」を発信していけたら—— もちろん、少しずつ、楽しみながらが、理想ですね。


「自分たちの住むまちを楽しくしたい」という思いからはじまった、宮地さんのお店作りは、月に一度開催される「枚方宿くらわんか五六市」との繋がり、お店をはじめたいという方への勉強会「開業ゼミ」、地元枚方のおいしいものを1つの箱にまとめた「HIRAKATA GIFT」の企画・販売、昔ながらの食・暮らし・ものづくりの良さを伝える「食と暮らしのマーケット」の開催と、次々と枚方のまちにムーブメントを巻き起こし、いつしかこのまちに漂う柔らかな風となった。

それは、まちの活気であり、誰かの居場所であり、また誰かの商いであり、私たちが歩くどこか懐かしいまち並みそのものなのかもしれない。

今日はお向かいのおばあちゃん顔見てないな

いつも散歩で通る赤ちゃん、歩けるようになったんや!

今日も宮地さんは、ガラス越しから通りを行き交うまちの人たちを眺めている。

変わっていくもの、変わらないもの。

やさしい陽射しが差し込む窓ガラスに、宮地さんの優しい笑顔がふわりと揺れた。

—— 2020年、ルポ・デ・ミディの第2章がはじまる。

※現在カフェ営業はお休みです。

ルポ・デ・ミディ 店舗概要

店舗名:Repos de midi (ルポ・デ・ミディ)
住所:大阪府枚方市堤町10-12
電話: 072-843-1525
営業時間:11:00〜17:00(L.O.16:00)
定休日:月曜日(祝日の場合は営業)
アクセス:京阪枚方公園
公式サイトFacebookInstagram

ルポ・デ・ミディの姉妹店「草々徒」も要チェック!

そうそう

野菜たっぷりのランチが食べたくなったら、枚方公園駅から歩いて10分ほどの場所にある姉妹店「草々徒」を訪れるのがおすすめ。開放感のある吹き抜けの店内からは、意賀美神社の豊かな自然が望める。

ランチメニュー

非日常感溢れる空間でいただく、優しい甘さのお野菜ランチは、疲れた体にじんわりと癒してくれるはず(草々徒公式サイト)!