大阪府枚方市にゆかりのあるアーティストやクリエイターに焦点を当て、生き方や仕事、作品へのこだわりや思いについてお伺いする連続インタビュー企画。
第11回目のゲストは、長尾元町にあるお茶の専門店「茶通仙 多田製茶」の、多田雅典さん(ただ まさのり)さんです。
今から約160年前、明治の初期に長尾のこの地で茶畑から始まった「多田製茶」。
その歴史あるお茶の世界をより面白く、楽しく伝えられるための企画やブレンド、また日本茶アドバイザースクールの専任講師も努めている多田雅典さん。
自身は「製茶問屋の取締役という肩書ですが、『お茶のなんでも屋さん』です(笑)」と、話す通り、お茶を通じてもっと楽しくワクワクできる要素を探求しているのだそう。
今回はそんな多田さんのお仕事やこれまでの経緯、そしてお茶のことなど、ひらいろ編集部がお話を伺ってきました。
【ABOUT】多田雅典/Masanori Tada
枚方市生まれ、枚方市在住。
長尾元町にあるお茶の専門店「茶通仙 多田製茶」の取締役であり、事業開発 室長。
また、日本茶インストラクターリーダー、辻調理師専門学校の専任講師を務める傍ら、最近では、アーティストとのコラボなど企画を中心とした日本茶のオリジナルブレンドの開発なども行っている。
多田製茶でのお仕事について
ー多田さんの肩書きを教えてください。
茶通仙 多田製茶の取締役です。役割としては事業開発の室長で、一言でいうと「お茶のなんでも屋」さんですね(笑)
ーお茶に関する資格などもお持ちだとか?
日本茶インストラクター協会が発行している日本茶インストラクターリーダーという資格と、日本茶アドバイザースクール専任講師の資格も持っていて、辻調理師専門学校で日本茶の授業もしています。
ー「多田製茶」内での仕事で主にされていることは?
企画関係が多いですかね。
最近多いのが法人や飲食店様からオートクチュール型の注文が結構多くて。
例えば、この雰囲気に合うお茶を作ってほしいとか、これのお菓子に合うお茶を作ってほしいというような、ほかにはないオリジナルブレンドの注文が多いですね。
アーティスト作品からインスピレーションされた
「VOGUE」掲載のお茶
ーたとえばどのようなオリジナルブレンドを企画されているのですか?
最近の珍しい事例だと、例えば、VOGUEにも掲載してもらったお茶があって。
東京渋谷のジンナンハウス(JINNAN HOUSE)にある日本茶カフェ、サクウ(SAKUU茶空)が、コミュニケーションをテーマにお茶を提案するプロジェクト「BYSAKUU バイサクウ」をローンチ。視覚と味覚を通して新しいお茶の楽しみを探る。
VOGUE JAPAN/LIFE STYLE NEWSより
プロジェクト名の「BYSAKUU バイサクウ」は、BYSA(売茶)+KUU(空=広がっていく、オープン)という意味を込めて名付けた。このプロジェクトでは、テーマとなる“コミュニケーション”や“茶葉“”を、さまざまなアーティストと共に視覚的に表現して届ける。
基本的なプロダクトは茶葉と白いTシャツだ。茶葉が日常になかったすべての人へ、一服のお茶で繋がるコミュニケーションを提案する。第1弾では、河村康輔によるアートワークの茶葉「CHAOS」を発売。コラージュという手法で、未曾有の災禍の中で分断されたと感じるコミュニケーションを繋ぐというテーマを表現した。
茶葉は大阪、枚方に拠点を置く多田製茶の多田雅典によるもので、それぞれのアーティストの作品からインスピレーションを得て合組(ブレンド)していく。
第2弾以降も順次展開予定だ。
これはうちが売っているのではなくて、売っているのはJINNAN HOUSEのBYSAKUUなんですけれども、僕が茶葉を担当したんですよ。
河村康輔さんっていうアーティストの方のアート作品をベースに、その世界観をお茶で表現してほしい、というご依頼で。
VOGUEにお茶が載るって今まであまりないので。そういった意味ではけっこう嬉しいなぁって。
ー実際に、どのように形にしていったのですか?
まず基本的には作品をベースに考えていくんですけれども、まず決まったのが「CHAOS(ケイオス)」っていう名前。
そこで「CHAOS(ケイオス)」ってどういう意味かっていうのをまず調べたんですね。
”無秩序”とか”数学的な考え”とか。
それをもう少し自分なりに因数分解して肉付けをして、それを基に、Artを自分なりに言語化していって、それを日本茶で表現した世界を考えたんです。
ここでいくとカオスって混沌とした世界なんですけれども、何かが生まれる前の力強さとか静けさとか。
アートとお茶が組み合わさることで新しい世界観ができたらかっこいいよね!と。
そういったことをずっと考えていって。
ここからお茶に必要なモノを洗い出して、形にしていきます。
ここからは具体的にブレンドの方法を考えていきながら、いいパターンを考えていく、という流れです。
ーこれは多田さんにしかできないですね!
多分こういったことをやっている人はすごく少ないと思います。
ーオリジナルブレンドの依頼はどのような流れで?
いただくお話のほとんどは「オリジナルのお茶を作りたいんですけども一緒にやってくれますか?」と、本当に突然です。
実はこれまで日本茶ってもともと合組のことをブレンドっていうんですけれども、その合組されたお茶が一般品だったんですよ。
その中で、うちがシングルオリジンという単一品種を使って、世界観やシーンによって合わせてお茶を作りませんか?っていうのを4年前くらいからずっと発信しているんです。
それがようやく最近注目を浴びてきたところで、その背景がご依頼に繋がったのかなと思います。
ターニングポイントとなったのは・・・
ーところで、多田さんがお茶の道にすすむきっかけとなったのは?
学生時代は、同志社大学の学生で、バックパッカーが趣味でずっと世界を旅行してたんですよ。
カナダにも留学したり、とりあえず海外に旅行するのが好きな大学生でした。
それで当時は全く日本茶にはこれっぽっちも関心がなくて(笑)
働くのであれば東京で何か最先端の仕事をしてみたいなぁっていう思いがあって、東京で新規事業を作っていくマーケティングの仕事をずっとしていました。
このときの経験が基本的に背景にあるんですね。
でもそれから、父親から「日本茶インストラクターの資格取ったらお小遣いくれる」って言われて。5万かな?大金じゃないですか(笑)
当時全く日本茶のことは知らなかったんですけど5万欲しいから勉強して、資格を取りました!
でもその時一緒に資格を取った人は、お茶屋さんを営んでるわけではなく、生粋の日本茶ファンの人が多くて。
そんな人が集まって「〇〇産のお茶はこんな味がして、品種はなんとかかんとかで」とか話してるのを見て、お茶にそこまで人を魅了するパワーがあるんだなぁってその時に思って。そこから初めて関心を持ったんですよ!
ーお茶に魅了されている人を見てそう思ったんですね。
そうなんです。お茶が人をそうさせる要素は何なんだろうっていう興味ですね。
例えば歴史もあれば化学もあれば生物学もあればって、見ていけばたくさん要素があるんですよね。
一方で仕事はマーケティングの仕事をしていたので、これまでの日本茶の一般的な売り方や商品の魅せ方を見ているとめちゃくちゃ違和感があって。
紅茶やコーヒーと比べて、お茶屋さんって入って何を選んだらいいか分かりにくくて、親切じゃないなぁと思って。
そういったところを、伝わりやすくするために自分ができることあるんじゃない?って思って、会社を辞めて、静岡に農研機構っていう旧国立のお茶の研究所で勉強して、実家の多田製茶に帰ってきました。
ーすごい、ターニングポイントが重なったんですね!
仕事をする上で大切にしていること
ー仕事をする上で最も大切にしていることはなんですか?
まず楽しいかどうか、ですね。
自分がまず楽しめるかどうかっていうところは1つで。その楽しさを人に伝えられるかどうかっていうのは大事にしています。
ー伝えることを大事にされているんですね
好きを発信して、その好きを共有してもらった時に、多分初めて人って喜んでもらえるはずなので。
まず自分が好きなものをきちんと発信しようというところと、あとは好きと思ってもらったお客さんがその好きを発信しやすいようにしてあげるっていうのが大事かなぁと思っています。
それは商品説明ももちろんそうなんですけど、中身は同じお茶でもパッケージが変わるだけで全然違うじゃないですか。
でも別にどっちが正解とかもないんですよ。
年配の人からすると、昔ながらの方が発信しやすいんですよ。
でも僕ら世代からするとそうじゃない。
それでいくと、人の好きを発信しやすいようにちゃんと考えてサポートするというか、心配りをするっていうのは大事かなぁっていうのは最近すごく思っています。
お茶を通じて、これからやっていきたいこと
ーこれから、みなさんに知って欲しいことは?
最近よく思うんですけれども、多田製茶って昔っからあるよね!とか、お茶だよね!って感じなんですよ。
それも正解なんですけど、多分、来てもらったらもっと楽しくワクワクできるなぁっていう要素があるので。
お茶に関してなんかちょっと知りたいとか、ワクワクしたいなぁって時には気軽に来て欲しいなぁっていうのがまず一つあります。
お茶の淹れ方や、種類など、今更こんなことを聞くと常識知らずみたいで恥ずかしい、って思われるかもしれないですけど、実はみんな知らないので(笑)
めちゃくちゃ気軽に「こんな味が好きなんですけどこんなお茶ありますか?」とか、なんでもいいのでとりあえず聞いて欲しいなぁって思います!
ー自分好みのお茶を探してみたくなりますね!
多田さん、ありがとうございました!
2分でわかる!初心者&手土産におすすめのお茶(動画紹介)
多田製茶のオススメカフェメニュー(動画紹介)
これから販売予定の新商品も
こちらは新商品として販売予定の和紅茶と、珍しい品種を使った甘いお茶です。
また、店内で販売しているスイーツと合わせたギフトボックスのご用意も。
スイーツに合わせた美味しいお茶や、お茶の淹れ方なども聞けるので、いつもとは違ったお茶の楽しみ方ができそうです。
「多田製茶」店舗概要
●茶通仙 多田製茶
住所:大阪府枚方市長尾元町1-40-1
電話:072-857-6056
営業時間:10:00~17:30
アクセス:長尾駅から徒歩7分
公式サイト