見たり聞いたり触ったり五感で学べた!あの工具ができるまで。不器用ファクトリー工場見学レポート 【室本鉄工株式会社】

目次

2025年11月に開催された工場見学『不器用ファクトリー』をレポート!

2025年11月22日,23日に、枚方・寝屋川のものづくり企業13社による工場見学イベント『不器用ファクトリー』が開催されました!

くずはモールでのワークショップに加え、参加企業の工場見学も開催されていました。今回は室本鉄工株式会社さんへ行ってきたので、その様子をレポートします!

イベント概要

開催日時:2025年11月22日,23日
開催時間:10:00〜(各工場で開始時間が異なります)
開催場所:各工場

『不器用ファクトリー』とは

枚方・寝屋川を中心にものづくり企業が参加するオープンファクトリーイベント『不器用ファクトリー』。

オープンファクトリーとは、工場や製造現場を一般に公開し、見学や体験を通じてモノづくりの魅力を発信するイベントや取り組みのことを指します。

不器用ファクトリーでは、2種類のイベントを開催しています。

① くずはモールで開催する子ども向けの体験型ワークショップ
② 実際に各工場に行く工場見学体験

●室本鉄工株式会社

今回レポートするのは室本鉄工株式会社さん。

室本鉄工は日頃私たちが使っているニッパーやペンチなどの”工具”から、職人さん向けの工具などを作っている会社です!

このレポートでは、今回の不器用ファクトリーで開催された室本鉄工の工場見学の様子をお届けします。

今回、工場見学を開催するのが初めてという室本鉄工さん。綿密に用意された行程と、社員のみなさん総出のおもてなしを受けて、とっても満足度の高い時間を過ごせました!

ひらガール

それでは早速、オープンファクトリーの様子をレポートしていきます!

【室本鉄工】オープンファクトリーの流れ
1. 会社紹介
2. ニッパーができるまでの見学
3. エアー工具の実演&体験
4. 工場見学:研磨機「ろぼみちゃん」の活躍を見てみよう

創業90年を超える老舗メーカー。現場を支える道具づくりの会社【会社紹介】

工場見学に行く前に、まずは室本鉄工について教えていただきました。

室本鉄工は、一般家庭でも使うニッパーやペンチ、職人さんが現場で使う道具などを作っている会社です。

ひらガール

2027年には創業100周年を迎える老舗企業です!

そんな室本鉄工には2つの工具ブランドがあります。

メリー(MERRY-TOOLS)
・メリー作業工具=人の力で動かす工具
例)ペンチ、ニッパー、プラスチックを切るヒートニッパーなど

ナイル(nile air tools)
・ナイル空気工具=圧縮した空気の力で動くエアー工具といわれるもの

一般用の工具だけでなく、自動車や電機をはじめとする多様な分野のモノづくりの現場を90年以上に渡り支えてきたのが室本鉄工です!

ブランド名の由来:
メリーは、海外でよく使われている人の名前だということで、親しみやすさがあります。
日本以外の海外でも広く使われてほしいという想いを込めて名付けました。

ナイルは、エジプトを流れるナイル川からとっていて、ナイル川が紀元前から文明の発展を支えてきたように、ナイルの工具も永く愛されてほしい、という想いのこもった名前なんです。

室本鉄工について小学生のお子さんでも理解できるように、わかりやすく優しい言葉で会社のこと、作っている工具について説明してくださいました。

さて、会社の説明が終わりいよいよ工場見学に移ります!今から工具が作られる様子を見られるのかと思うと、参加者の子供もワクワクしている様子です♪

ひらイヌ

スタッフさんの案内に従って、工場に入っていくワン!

ニッパーができるまで:熱と型で基礎を作る!【工場見学】

工場に入ると、まずはMERRY作業工具の1つ、ニッパーの製造過程の見学です。

ニッパーの形をまず鉄で整形するのですが、その過程は大きく6つに分けられます。

  1. 鍛造(たんぞう)
  2. 穴あけ加工(ドリル)
  3. ミーリング(削り加工)
  4. カシメ(組み立て)
  5. ロータリー研磨
  6. 表刃と裏刃の加工

それぞれの過程について、詳しく説明をしてくださいました。見た目だけではもう使えそうな形をしていていも、刃がないので切れなかったり、刃の部分がまだ開かなかったりします。

ひらガール

はじめてみるニッパーの完成前の状態に、大人も熱心にお話をきいてしまいます!

熱処理:工具としての「強さ」を生み出す

続いて、熱処理と呼ばれる工程の見学をしました。

ニッパーが”切る工具”として役立つためには、「刃の強さ」が非常に大切です。そのために欠かせないのが、鉄の性質を変える熱処理

鉄などを加熱と冷却によってより使いやすくする方法です。

熱処理の仕組みをお餅に例えると・・・

  • 焼き入れ(硬くする
    鉄を800度近くまで温めてから油の中に急激に冷ますことで、鉄を硬くします。

    これはお餅で例えると「鏡餅」のように硬い状態です。ただし、この状態だとガラスのように脆い欠点があります。
  • 焼き戻し(粘り強さを加える
    硬くなった鉄をもう一度温めることで、脆さが解消され、粘り強さが加わります!

    これは、鏡餅を焼いて食べるために「温め、加工しやすくする」のに似ています。
焼き入れの様子

実際に、ニッパーを焼き入れ作業されているところを見学させてもらいました。

職人さんの手元のニッパーの先の部分が、熱くなって赤白くなる様子が見えます!一つひとつ手作業なのにも驚きます。

そして焼き入れが完了したニッパーと、焼き入れ前のニッパーで同じワイヤーを切断してみて、どう違うかを見せてもらいました。

すると、焼き入れをしていないニッパーの刃は中央部分が凹んでしまい、切れ味も比較すると全く異なりました。

焼き入れを行ったニッパーはパチンッという音でワイヤーが切れました。

ひらガール

私たちの家庭にある包丁やハサミなども、この熱処理工程によって刃が強く、硬くなっているのですね

仕上げ加工:美しさと使いやすさの追求

熱処理を終えたニッパーは、仕上げ工程に移ります!

まずは刃付け(刃研ぎ)といって、職人さんがニッパーの刃を研磨し、実際に線が切れるように調整する作業。

そのあとに表面研磨(磨き上げ)を行います。ニッパーの表、裏、そして左右の表面をきれいに磨き上げられる様子はまるで魔法を見ているようなでした。

ひらイヌ

火花を出しながら行われる研磨は、特にとっても見応えがあったワン!

最後に、グリップの装着です。持ちやすく、手が疲れたり汚れたりするのを防ぐため、グリップをつけます。

そして、ようやく見慣れたニッパーの形になりました!室本鉄工のニッパーは、用途に応じて使い分けられるように、細いものから大きなもの、グリップも素材が異なるものもあり様々です。

ひらガール

一本のニッパーが生まれる裏側には、職人さんの繊細な技術が凝縮されていました!

続いて、もう一つのブランドnile air tools(ナイル空気工具)を見に行きましょう〜!

空気の力で鉄板を切る!プロの現場を支える室本鉄工の「空気工具」

ここからは室本鉄工の「nile air tools(ナイル空気工具)」という、空気の力を使って、その工具が通常もつパワーをより強くしたプロフェッショナルな工具の魅力を教えてもらいます!

そんなのまで切れるの!?と驚きの連続です!では早速そのラインナップを見ていきましょう〜!

① エアヒルソー(空気式ノコギリ)

▼特徴:
ノコギリの刃先を高速で前後に動かし、手で切る作業を楽にする工具。

▼用途:
主に車の修理工場や板金工場などで使用される。

実際に鉄の板を切っていくと、大きな音とともにみるみるうちに切れていきます。手を動かすことはほぼ必要なく、工具を支えるだけでオッケー。

これは車などの製造をする職人さんもかなり効率良く、作業できますね!

② ショットハンマー(空気式ハンマー)

▼特徴:
空気圧を利用して、先端を勢いよく飛び出させ、釘などを楽に打ち込むことができる工具。

▼用途:
大量の釘打ち作業などで活躍

四角い木材に対して、釘を5本テンポよく楽々と打ち込めます!

③ マルチハサミ(空気式ハサミ)

▼特徴:
ハサミの「開いたり閉じたり」を空気の力で超高速で行い、硬い素材も楽に切断できるようにした工具。

▼用途:
車やバイクのシートの余分な部分を切る作業など、手作業では時間がかかる場面で使用されます。

上の刃が目にもとまらぬ速さで動き、手を握ったり離したりせずとも簡単に布を切っていけます!

④ エアプレートシャー(鉄板切断ハサミ)

▼特徴:
先ほどのマルチハサミのレベルアップ版であり、工具の大きさや刃の形を変えることで鉄の板まで切れるようにした工具。

▼用途:
クルマの板金加工や板を切る仕事などで使われています。

簡単には曲がらない、硬い鉄の板が、まるで紙のように簡単に切断されました!

⑤ メリーカッター(軟材切断専用)

▼特徴:
ホースや銅線など、主に軟材と呼ばれる柔らかいもの全般を切断できる工具。

▼用途:
電気工事や配線作業などで幅広く使用されます。

何百本とまとまった太い被覆電線や、割り箸などの木材も、バターを切るように簡単に切断できました。

重なった付箋を一気に切る様子
割り箸を切る様子

⑥ ヒートニッパー

続いて紹介されたのは、熱の力を利用した特殊なニッパーです。

▼特徴:
刃の部分に電気を通して熱くなるヒーターを取り付け、刃を温めながら切るニッパー

▼用途:
割れやすいデリケートなプラスチック部品の切断・加工。

どのぐらい熱くなるかというと、刃の表面温度は約200度に達します!

通常のニッパーでプラスチックを切ると、割れて破片が飛び散ってしまいますが、ヒートニッパーで切ると、プラスチックを溶かしながらゆっくり切断できるため、割れずにきれいに切ることができました!

⑦ エアーニッパー

▼特徴:
空気の力で簡単に硬いものを切断することができる工具。

▼用途:
銅線や鉄線の切断など様々な場面で活躍します。

鉄のワイヤーを通常のニッパーで切断する場合、やはり力が必要なので、お仕事で何本も切断する必要があったりすると大変です。

そこでエアーニッパーを使うと、とっても簡単にリズムよくワイヤーを切断できます!

ひらガール

あらゆる業界にいるモノづくりをする職人さんたちの、日頃のお仕事を支えている工具を見られてとっても貴重な時間でした!

さて、工場見学も後半に入ります!

室本鉄工さんの工場をぐるっと一周するような形で、案内してもらっています。普段は入れないところに入る非日常感がワクワクしますね。

研磨機のろぼみちゃんを見てみよう!【工場見学】

最後に、室本鉄工にいる研磨機「ろぼみちゃん」を見せていただきました!

大人の背丈ほどある大きな透明な部屋が用意されており、中には大きな機械が設置されています。

レーンにニッパーを入れてボタンを押すと・・・

人間の手先の動きを再現させたプログラムを設定しているというこちらの機械、ニッパーを持って向きを変えながら表面を磨いています!

磨き終わったニッパーはきっちりレーンに置いて、返してくれました!ろぼみちゃんスゴイ。

ひらイヌ

一部の作業をろぼみちゃんのような機械にお願いすることで、より多くの人に使ってもらえるんだね。

まとめ

ここまで、室本鉄工で実際どんな工具が作られているのか、そしてどんな風に使われているのかを学ぶことができました!最後に社長の石濵さんからメッセージをいただきました。

工場見学を通じて、参加者、特にお子さんにはにモノづくりへの興味を持ってもらい、将来ものづくりの仕事に就いてもらえたら嬉しいです。
今日はありがとうございました!

室本鉄工社長の石濵さん

▼参加した感想:
見学だけにとどまらず、工場の”音”を聞いたり、鉄の匂いがしたり、自分で工具を触ってみたりとまさに「五感で学べる工場見学」でした。
各部門で工具や作業について説明してくださる皆さんの”モノづくり愛”もとても伝わってきて、今後工具を使う時にきっと思い出す貴重な経験になりました!

ひらガール

次回、開催にも期待です!ありがとうございました!

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